難病について

「あなたの病気は難病の可能性があります」
30年ほど前に医師からそう告げられた時、頭が真っ白になり、自分のことのように考えられませんでした。

平凡な生活かもしれないけれど、そこそこの年齢まではきっと健やかに生きられる。そんな日々の幸せを「あたりまえ」のように感じていた自分にとって、「難病」という言葉は遠くの他人事のようで、「よくわからないけど大変なんだろうな」という程度の理解しか持ち合わせていませんでした。

これは決して私だけではなく、現代の多くの方が同じように感じていることかと思います。
しかし、だからこそ。私は伝えていかなければなりません。難病や希少疾患は「誰にでもなる恐れがある」という現実を。

遺伝的に、あるいは先天的に疾患がないから大丈夫というわけではありません。裕福な家庭環境だから安心ということもなく、風邪1つかからない健康体だから発症率が下がるということもありません。

難病の定義が発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすること(厚生労働省より)とあるように、ある日突然、体調不良の原因が希少疾患だったというケースも少なくないのです。

ただ私は、決して脅したいわけではありません。まず多くの人に正しく知ってもらいたいのです。身近に苦しんでいる人がいること。それでも病気と向き合いながら、がんばっている人がいること。そして当然、がんばりたいけど、難病という現実を受け止めきれない人もいることを。

そしてこれは、難病の当事者に限った話ではありません。患者を支えようとしてくれる家族や友人。少しでも生活が送りやすくなるように、治療薬を開発してくださっている企業。病気の解明を進めてくださる医師や研究者のみなさま。数えきれない人たちが今この瞬間も難病に関わっており、この社会に生きる以上、決して他人事ではないことを、多くの人に知ってもらいたいと考えています。

現在の医療費助成の対象疾病は、ゆうに300を超えています。しかし、患者数の多さから対象から外れてしまうケースも少なくありません。その場合、病気だけでなく生活面でも苦労を強いられることになります。難病患者の方々は、制度が変わるたびに「医療費の助成対象から外れてしまうのではないか」「治療を突然受けられなくなるのではないか」と、日々怯えながら生活しています。もちろん、私自身も同じ不安を抱えています。

生命に別条はない軽度の難病とされていても、闘病や生活が滞りなく送れるわけでは決してないのです。むしろ、軽度と判定されたことにより病気以外の部分で苦労が増えることもあります。
障害年金の対象外となることはもちろん、そもそも障害手帳を持てないため、就職活動をする際も健常者と同じ扱いですすんでいきます。日によって症状の重さも異なるため、面接日当日に体調を崩し、就労の機会を逃してしまうことも多々あります。なかなか定職に就けず、生活が安定しない日々。病気そのものの障害ではなく、二次障害となり、精神や心を消耗してしまうのです。

私たちは病気の苦しみだけではなく、生活面での不安や困りごと、家族の葛藤や周囲から見えづらい病気の困りごとなど、多角的に情報を収集し、発信していきたいと考えています。

もしかしたらあなた自身も、いま難病の苦しみと1人で立ち向かっているかもしれません。そうだとしたら、まず私たちに話を聞かせてください。今は辛く、苦しい日々かと思います。しかしそんなあなたの声は、同じ難病の悩みを持つ方々にとって大きな力になります。悩みの声を集めて、社会を変えていく原動力に。難病を抱えても安心して暮らせる世界をつくるまで、私たちの活動は続きます。